在日外国人を対象に、日本人の口臭についてどう思っているかという調査がありました。すると72%の外国人が「日本人の口臭にガッカリした経験がある」と答えています。外国人のアンケートでは、日本女性は常にお嫁さんにしたい外国人の上位にランキングされます。そのイメージは「おしとやかな 大和撫子」。でも実際日本人女性に会うと、口臭にガッカリするというのです。外国人は体臭がきつくて、香水でごまかしているイメージがあって、口臭もきついとイメージしがちですが実際には違うのです。ブレスケア先進国アメリカでは日本人の口臭が最も強烈だと思われています。

アメリカを代表とする先進国はボディタッチの文化です。朝起きたらキスをする。挨拶にハグをしてキスをする。夜寝る前もオヤスミのキス。口臭がきついようではコミュニケーションがうまく取れないのです。だから、ブレスケアにものすごく気を使います。

一方、日本はよくも悪くも恥じらいの文化です。息が届くほどの距離でのコミュニケーションはほとんど必要ありませんでした。欧米人と日本人ではコミュニケーションの距離が違うのです。

なぜ、日本人の口臭がきついかというと、一番の理由は歯周病です。そして私は食後の歯みがき習慣にあると思っています。口臭を予防するは唾液です。その唾液の一番能力が高まっているときに、歯磨剤といっしょに口の外に吐き出しています。もしも周りに口臭のきつい方がいらっしゃいましたらぜひ試してほしいことがあります。勇気を出して食事直後のその方の口臭を匂ってみてほしいのです。常の口臭がどんなにきつい方でも、ほとんどの口臭が消臭されています。それほど食事直後の唾液の消臭能力はすごいのです。そのスーパー消臭剤を口の外に吐き出す習慣を身に着けてしまっているのです。実にもったいない話です。口臭に敏感な欧米では、食後にガムをかみます。ガムをかむことで唾液の分泌を促進しています。唾液を味方につけることが口臭予防には一番なのです。

この口臭問題の一番やっかいなところは、脳みその本能を感じる部分に作用するということです。カレーのにおいを嗅いだらお腹が減ったと感じるように、嗅覚刺激は顕在意識よりもっと深いところを刺激します。例えば、すごく素敵な人がいたとします。その人の口臭が強烈だとしたら、素敵なことを意識ではわかっているのですが、脳のもっと深い部分でその人のことを遠ざけてしまうということが起こってしまうのです。嗅覚にはもう一つ「慣れる」という素晴らしい性質があります。自分のにおいは自分ではわかりません。自分ではわからない。相手も意識レベルではわからない。でもいわゆる生理的に合わないと感じてしまい、距離をとるようになってしまうのです。歯科臨床の場では、パートナーの口臭について質問されることがあります。口臭が解決しなければ離婚になるといった深刻な相談まであります。口臭と離婚率の関係。口臭と商談成立との関係。口臭と幸せ度の関係。これらは検証のしようがありませんが、間違いなく因果関係は成立することでしょう。