スポーツドリンクに対して、体に良いというイメージを持ってしまう大きな理由に、学校の先生、そして小児科の先生にすすめられるということもあるようです。

「熱を出したとき小児科の先生にスポーツドリンクを飲むように言われて、そらからずっと飲んでいます」と言われるお母さん

「クラブ活動では水をとってはいけない。必ずスポーツ飲料ドリンクを飲むように」と顧問の先生に言われて、日常的にスポーツ飲料を飲む中学生。

食欲不振でスポーツドリンクを毎日飲んでいる高齢者。

学校の先生やお医者さんがすすめるのだからそれを信じて当たり前です。もしかしたらよほど体が衰弱しているのなら有効な飲み物かもしれません。しかし、それを日常的に飲む習慣は、口だけではなく全身を蝕みます。例えば、糖尿病予備軍の方が、運動をはじめスポーツドリンクは体にいいはずだと思い込んで常習的に飲用すると、確実に糖尿病の方に向かいます。

スポーツドリンクは、糖分過多の嗜好品です。砂糖は中毒性のある毒です。ということを歯科医師として伝えていかなければならないと感じています。

嗜好品であるとわかっていて飲むのは良いと思いますが、体にいいはずだという思い込みで飲み続けると、反対に体を壊してしまいます。

さて、それでは補液としてどのようなものがよいかということもお伝えしなければなりません。電解質濃度、糖質の量、PHなどを考えると、ORS(経口補水液)が適当ではないかと考えます。水に電解質を加え、吸収をよくするために少量のブドウ糖を加えています。ORSは電解質がバランスよく含まれています。糖質は砂糖ではなくブドウ糖です。PHも弱アルカリ性で虫歯や歯周病のリスクもほとんどありません。ただ一つの問題は“まずい”ということです。“まずい”と売れない。これがORSよりもスポーツドリンクが出回っている本当の理由ではないかと推測します。ORSにも注意が必要なのは、最近のORSの中にはきっとこの“まずい”問題を解決するためにクエン酸が入っているものがあります。クエン酸が入ったものは、常飲すると口の中が酸性に傾きますので虫歯のリスクが増えます。

以下、私にスポーツドリンクについてご教示してくださった、大阪市開業の歯科医師豊田裕章先生、京都福知山開業の杉岡真一先生がまとめられた考察を紹介します。

  • 激しい運動をしているとき以外は、水分補給だけで十分である
  • スポーツドリンクを薄めると、糖質濃度は適切になるが、電解質濃度も薄まるので効果が少ない
  • 激しい運動をして、脱水が心配される場合はORSを飲用する
  • ORSは糖質がブドウ糖で、弱アルカリ性なので、虫歯のリスクが少ない。