虫歯予防効果があると思って子供にキシリトール入りガムを食べさせていたお母さん。

禁煙の口の寂しさを紛らわすためにキシリトール入りガムを食べ続けたトラックの運転手さん。

口臭予防のために食後にキシリトール入りガムを食べていたOLさん。

残念ですが、スーパーで買ったキシリトール入りガムの中には食べ続けると虫歯になるものがあります。

キシリトールは虫歯を起こさない素晴らしい甘味料であります。しかし、キシリトールといっしょに砂糖を代表とする糖類が入っている場合、その糖類が虫歯になることを抑える能力はないのです。

100%キシリトール配合のガムであれば、虫歯予防も期待できるでしょう。でもそれはスーパーには売っていないのです。スーパーで売っているキシリトール入りガムのほとんどが、30~70%キシリトールです。50%以下では、全くほとんど効果がありません。キシリトール95%でも砂糖が5%入っていれば当然虫歯になります。

それでは、なぜそんなまがい物みたいな商品があるのか。おそらくは、「キシリトール配合」って書いてあるとよく売れるからです。でも、キシリトールは高価なので、100%キシリトールにすると商品が高価になって売れない。なので、30~70%の商品でキシリトール配合をうたいます。実際キシリトールが入っているので、メーカーも嘘を言っているわけではないのです。メーカーの目的は商品が売れることですので、キシリトールを利用して商品を売るのは当たり前なのです。

日本の現状では、“キシリトール入りだと虫歯にならないと勝手に思い込んでいるあなたが悪い”ということになってしまいます。

少し難しい話になりますので興味のある方だけついてきてください。歯科医師として、虫歯予防としてキシリトールを使うときの注意点というか選び方を書いておきます。大きく注意点は3つあります。

  • キシリトールが50%以上含まれていること

キシリトールガムに成分分析表をついています。例えば、炭水化物16.3g 関与キシリトール7.0gとか書いてあります。この場合キシリトール含有量はキシリトール(g)÷炭水化物(g)×100で計算します。7.0÷16.3×100=46.6%です。 こういう商品があった場合、キシリトール入りをうたっているが、虫歯予防効果はほとんど期待できません。キシリトールは1日5gとらないと効果はありませんので、1日で5/7パックとらないと効果がなくかなり非効率です。

  • 糖質が入っていないこと

同じく、成分分析表で糖質の表記が0%になっていること。キシリトールが90%でも糖質が10%入っていると虫歯になります。100%なら夜寝る前に食べても安心ですが、糖質10%は寝る前に食べると虫歯になります。

  • 酸性物を含まない

口の中に酸性のものが入ると歯が溶け出す脱灰という状態になります。クエン酸や果汁入りなどは酸性になりますので注意が必要です。

ここまでが少し難しい話です。それでいちいち成分分析表をみて計算しながら商品を選ぶって、できる人はしたらよいと思うのですが、なかなか現実的ではありませんよね。安心なのは、スーパーで買うなら、虫歯予防目的の特定保健用健康表示(いわゆるトクホ)の商品もしくは、歯に安心マークのついたものを買うか、歯科医院で歯科医院専売キシリトールを買うことです。歯科医院専売品はキシリトールが100%で安心です。しかしながら高いのです。

キシリトールガムは摂取量として1日に2粒を5分噛み、1日7回を目安に1週間続けると効果的です。と書いてあります。歯科医院専売のキシリトールガムボトルタイプが90粒入りが1000円程度ですので、1日に14粒 1週間で98粒 1週間で約1000円の計算になります。

歯科医院でしっかりと虫歯予防の効果の説明を聞いて理解した後なら買おうかなと思うかもしれませんが、スーパーではなかなか売れないだろうなっていう価格設定になります。だから、キシリトール濃度の低い商品がスーパーでは出回っているのです。

スーパーで“キシリトール入り”と書いてあって「きっと虫歯予防効果があるんだ」ってあなたが勝手に思い込んで、その商品を買う。でも虫歯予防効果なんてほとんどなくて、むしろまじめな方はそれを食べ続けることによって虫歯を作っている可能性があるというのが現実なのです。

歯科医院専売のトクホのキシリトール商品を出しているメーカーも、歯科医院専売用とスパー販売用では全くキシリトール%が違います。「歯科医院で売っていたメーカーのものがスーパーではずいぶん安い」スーパーで購入するあなたの気持ちよくわかります。そのガムの味が好きだったらもちろんいいのですが、虫歯予防という視点で考えると、ちょっと待ってくださいねという話です。

キシリトールは虫歯予防効果のある素晴らしいものです。

でも、キシリトール入り商品のすべてに虫歯予防効果があるわけではない。虫歯になってしまうものもある。

とても大切なことなので覚えておいてください。