前号に続きまして『唾液と病気の関係』です。

 

○肺炎

日本人の死亡原因第4位の肺炎。肺炎発症にも唾液が関係しています。

唾液が少なくなり、口の中の病原性細菌が気管に感染すると肺炎を併発します。高齢者だけでなく、若い世代でも、手術後など免疫力が低下している状態では、症状が重篤化して命に係わります。高齢者の死亡原因の上位をしめる誤嚥性肺炎も、唾液が充分に出る状態をキープできればずいぶん予防ができます。

○インフルエンザ

唾液とインフルエンザは深くかかわっています。例え、インフルエンザ菌がのどの粘膜にいたとしても、それだけでは感染しません。それは、のど粘膜には糖タンパクというバリアーがあるためです。でも、唾液が少ないとそのバリアーが破壊されます。そして、インフルエンザ菌が細胞内に入るようになります。唾液が充分に出ている状態は、その殺菌作用で、細菌数が減り、感染のリスクも減るのです。またインフルエンザ菌は湿ったところが苦手と言う特徴もあります。歯磨きや、舌磨きがインフルエンザ予防になるとの調査結果もあるほどです。

○食中毒

O157という菌が原因で食中毒になることがあるということはご存じだと思います。平成8年7月には大阪堺市の小学校で約1000人が感染してしまうという大きな事故もありました。非常に毒性が強い病原菌です。しかし、胃酸はものすごい殺菌力で、胃酸がしっかり働いていたとしたなら、この病原菌は胃で殺菌されているはずなのです。胃酸がしっかりはたらくスイッチが唾液です。しっかり噛んで、表面積を増やしてまず唾液の殺菌効果によって殺菌する。そして、胃酸のスイッチが入り強力な殺菌力で病原菌を死滅させる。この体が持っている殺菌力が弱まっているため腸で感染してしまいます。小学校の給食では、スープや牛乳が出されることが多く、噛まずに飲み込んでしまう。また、時間的にもゆっくり噛んで給食を食べる時間がないということもあります。正しい姿勢で、正しい食べ方をするようにすることは、食中毒の大いなる予防になります。

 

考えてみれば当たり前の事なのですが、お口は全身につながっています。お口の状態は目で確認できるがためにかえって油断してしまいがちです。歯磨きの仕方を確認すると意外と鏡を見ていない人が多いものです。鏡を見ている人でも顔を見ていてお口の中は見ていない。ぜひご自分の歯ぐきや舌の色を見る習慣をつけてみてください。元気な時と疲れている時では、色や艶が違います。唾液が違うからです。

お口の中の状態が良好だということは、全身の血液循環がよくなっていて、健康状態も良いし、お肌もツヤツヤになります。