だ液には大きく6つの役割があります。

 

  • 美味しさを感じる作用(溶解作用)

食べ物の中の味物質を溶かして、美味しさを引き出す作用があります。最近の子供たちには、アワビはあまり好評ではありません。かたくて味も感じないそうです。しっかり噛んで、唾液と混ぜ合わされることによりうま味が出てくるのですが・・実にもったいない話です。

  • 洗浄作用

唾液の水分で、食べかすや細菌を洗い流します。昔の食べ物は、繊維質も多く、自然そのままのものが多かったので、別に歯磨きをしなくても、唾液だけで口の中は清潔に保たれました。しかし、現在は軟らか食が多いので、唾液だけでは洗浄されないので、歯磨きがとても大切になります。包丁でリンゴを切った後は水洗いだけでもけっこうきれいですが、やわらかいケーキを切ったあとでは、水洗いだけではなかなかきれいになりませんよね。それと同じです。

  • 傷を早く治す作用(抗菌作用)

ネズミには気の毒な実験ですが、面白い実験があります。ネズミの背中を1センチ四方に切り、1匹で飼った場合と、数匹一緒に飼った場合の傷の治り具合を比べました。2日後傷口を調べました。1匹で飼った方は20%しか治っていないのに対して、数匹で飼った方は75%も治っていたのです。ネズミは偉いもので、数匹で飼った方はお互いの背中を舐めあったのです。その結果、唾液の傷を早く治す作用で傷の治りがよかったのです。昔から、小さな傷ならツバをつけておけば治ると言われているのも理にかなっているのです。

  • 中和作用(緩衝作用)

歯って、石のようにかたまっている物質のように思われていますが、実は飲食するたびに、カルシウムやリン酸が溶けだしてします。表面が少し溶けているのです。歯はPH5.5以下で溶け始めます。約20分間溶けて、元の中性に戻るには1時間かかります。ビックリしませんか?その溶け具合が大きいとむし歯になるのです。その溶けた部分がどうなるかと言いますと、唾液の力でもとに戻るのです。唾液中のカルシウムやリン酸が、歯を修復してくれているのです。

*唾液中和力実験

5ccの水と唾液にそれぞれ0.2ccの塩酸を入れる。

水の方はPH2.3 唾液の方はPH6.0までしか低下しません。

PH2.3の水を薄めてPH6.0にするためには、5L以上の水が必要です。

唾液は、水よりも約1000倍~10万倍も中性に戻す力が強いのです。

  • 歯やほっぺを守る作用(保護作用)

歯の表面に被膜を作り、むし歯の原因菌であるミュータンス菌が入らないようにしてくれています。人の前歯の平均寿命は、上が62年。下が66年と4年も差があります。上の前歯よりも下の前歯の方が4年も寿命が長いのは、下の前歯の内側には、大きな唾液腺があって常に唾液に触れているからなのです。またほっぺや舌も唾液によって、感染や損傷から守られています。

  • 口の中を湿らせる作用(円滑作用)

結婚式のスピーチのように緊張する場面で、声が裏返ってしまう方がいらっしゃいます。それは、緊張によって唾液分泌が少なくなり、口の中が乾いて舌のまわりが悪くなるからです。また、緊張する場面では、食べ物がのどを通らなくなります。唾液分泌が少なくなり、のどが乾燥して、食べ物を胃に運べなくなるからです。唾液は、滑舌よくしゃべったり、食べ物を飲み込むときにでも活躍しています。