細菌のDNAを使った研究で、むし歯菌はおもに垂直感染(母親や保育者から子供へ移行する)ことがわかっています。このことは多くの保育者の方もご存じです。ですので、子供にむし歯菌を感染させたら大変だということで「離乳食をあげる時のスプーンをお母さんがなめたらダメ」「キッスもダメ」「頬ずりもダメ」と過度に警戒してしまうお母さんがいらっしゃいます。しかし、かわいい子供とのスキンシップが充分に取れないのは、お母さんにも、子供にもストレスになります。今回は安心してスキンシップがとれる方法を紹介します。

 

むし歯菌の感染は、赤ちゃんのお口の中の細菌に影響されます。腸の中にビフィズス菌という善玉菌がいるように、お口の中にも善玉菌(サングイス菌)がいます。赤ちゃんのお口の中に善玉菌が先に住んでいると、ミュータンス菌はかなり感染しにくくなります。つまりむし歯菌より先に善玉菌に感染させればいいわけです。

 

お母さんの口の中の状態が、善玉菌が多い状態であると、赤ちゃんにとって歓迎すべき感染が成立します。つまり、むし歯菌の感染という観点から言うと、お母さんのお口の状態が良い場合は積極的に赤ちゃんとスキンシップをとった方が良い。お母さんのお口の状態が悪い場合は、お箸やスプーンも気を付けた方がよいのです。

 

そのため、お母さんや保育者が砂糖を控えること、普段からしっかり歯磨きしていることが大切です。治療していないむし歯があったり、絶えずお菓子お口にしていると、お母さんのお口の中の細菌に占めるミュータンス菌の割合が高くなり、感染の危険性も高くなるのです。

 

お母さんのお口の中の状態を良くすることについて、フィンランドの研究者のサーダリンは、興味深い研究をしています。歯科検診に参加した妊婦の口の中の細菌レベルを調べて、ミュータンス菌がたくさんいる妊婦を選び出し、出産後、赤ちゃんが3か月~2歳の間、お母さんにキシリトールガムを噛んでもらい、子供のミュータンス菌の数を調べたのです。子供にキシリトールガムを噛ませていませんが、お母さんがキシリトールガムを噛んでいたグループでは、子供の口の中からミュータンス菌は少ししか見つかりませんでした。お母さんがガムを噛むのを辞めたあとも調査を続けていますが、やはりガムを噛んだお母さんのグループの子供たちは、ミュータンス菌が少ないままでした。(ミュータンス菌の定着率3歳までで全体の27%、6歳までで51%)《0歳からの口腔育成(日本口腔育成学会:中央公論新社より)》

 

つまり、かわいい子供と安心してスキンシップをとるために、かかりつけ医による定期的な健診および歯科医師もしくは歯科衛生士によるプロによる歯のクリーニング、キシリトールの使用が有効となります。さらに舞鶴市では、26年度も妊産婦歯科健診が市の補助により行われる予定ですので、あわせて利用されることをおすすめします。