歯科の中には、健康保険がきく治療と、全額自己負担になる自由診療の治療があります。国民皆保険制度のある日本では。医療費は基本的に公的保険でカバーされています。しかしながら、すべての治療に保険が使えるわけではありません。対象は原則として病気の治療に限られており、むし歯や歯周病などの治療がそれに当たります。つまり、むし歯や歯周病と診断されて、削る、詰める、かぶせることや、ブリッジや入れ歯を作るなどの治療は、保険がききます。これに対して、歯並びをきれいにする矯正治療や、歯を白くするホワイトニングは美容目的と考えられるので、特別な場合を除いて全額自己負担(自由診療)になります。

歯科における自由診療と保険診療を分ける基準はそれ以外にもあります。保険治療でできる治療とできない治療があるのです。例えば、歯に詰める詰め物の金属の種類により保険適応であったり、自由診療であったりします。また入れ歯の種類により自由診療になるものや、最近一般的になってきたインプラント治療も自由診療となります。保険診療で使える材料は決まっていて、高価なものは入っていません。ですので優れた材料を使おうとすると自由診療になってしまうのです。

保険診療(3割負担の場合)と自由診療で、どれくらいの金額の差がでるのかかぶせ1本を治療する場合で比較してみましょう。保険診療の場合、前歯にはほとんどの場合金銀パラジウム合金の土台に、外から見える部分は白いレジンという材質を張りつける『硬質レジン前装冠』というかぶせになります。奥歯はいわゆる銀歯と言われる金銀パラジウム合金のかぶせが使われます。1本につき前歯で10,000円程度、奥歯で5000円程度の治療費となります。それに対して、審美的にも強度的にもすぐれているセラミックの歯(メタルボンド)を使用して自由診療で治療した場は、だいたい8万円~20万円の治療費となります。

さて、自由診療の金額ですが、これは医師が自由に設定することができます。一人の患者さんにどれくらいの時間や回数をかけるのか。どのランクの技工士に仕事を依頼して補綴物を作ってもらうのか。などを考慮して決められます。補綴物を作る技工士もピンからキリで、料金も外国に依頼してものすごく安価にできるものや、神業的な職人技で高額な技工料となる場合もあります。同じ材質を使う治療であっても、歯科医師の診断力を含めた技量、技工士の技量、経験などのよって大きく差が出てくるわけです。この自由診療の金額の差は、都市部に行けば行くほどピンキリで、歯科医師の私から見ても信じられないくらい安価な治療費大きくを宣伝しているところもありますし、驚くほど高額なところもあります。選択肢がたくさんあることは良い事なのでしょうが、患者さんからしたらどの歯科医院を選んだらよいかわからないということが本当のところではないでしょうか。

もちろん金額も歯科医院を選択するうえで重要なポイントであることは間違いありませんが、歯の治療が納得いかないと一生後悔することになります。その歯科医師が本当に信頼できる歯科医師か。スタッフや歯科医師は親身なってあなたの話を聞いてくれるか。その医院との相性など総合的に判断して決めた方がよいでしょう。