あなたの体の中を流れているブドウ糖はどれくらいかご存知ですか?糖尿病でない正常な方で角砂糖1個(4g)程度。血糖値が200mg/dlの方でも角砂糖2個分のブドウ糖です。
スポーツドリンク500mlのペットボトルの中の砂糖は、角砂糖10個分です。この異常な状態お分かりですか?体に必要なのは角砂糖1個分のブドウ糖。スポーツドリンクに入っているのがその10倍の糖。それもブドウ糖ではなく砂糖です。
砂糖ははっきり言って“毒”です。オランダの首都、アムステルダムの公共衛生局長は、「砂糖は、アルコールやたばこと同じような麻薬だ」「砂糖を摂取すると、空腹感がおさまったあとでも、さらに摂取したくなる。卵であればある程度で食べることを止めることができるのだが、食品産業はこのメカニズムを悪用し、食品を必要以上に甘くしている」と主張しています。
この同じ構図が、日本のスポーツドリンク市場にもあるように思います。
経口補液の基本は、ブドウ糖2%です。日本のスポーツドリンクにはその2~3倍の濃さの6%前後の糖質が入っています。きっと甘い方が売れるのでしょう。しかもブドウ糖ではなく、砂糖や異性化糖です。スポーツドリンクの糖質濃度を2%に近づけるために、3倍に薄めて飲んだ方よいと主張される方もいます。
そうなるとそもそもスポーツドリンクがなぜ必要かという問題になってしまいます。おそらくあなたは、スポーツドリンクは、熱中症や激しい運動による電解質の補給のために必要だと思っていますよね。WHOの提唱する経口補水液は,Na75mEq/L K20mEq/Lです。日本のスポーツドリンクの中で比較的電解質が多いものでNa21mEq/L K5mEq/Lです。もともと意外と少ないのです。その少ない電解質を3倍に薄めると補水液の意味がなくなってしまいます。
日本のスポーツドリンクは、そのまま飲むと、糖質過多。うすめると肝心の電解質がほとんどなくなってしまうということになります。
最近は、「カロリー0」「糖質オフ」という商品も出ていますが、そもそもスポーツドリンクは、糖分の浸透圧が体液や血液に近いので早く吸収されるというのが特色です。その配合バランスは糖と電解質の調整ですが、糖として人工甘味料を使ってしまうと浸透圧の調整ができずに、スポーツドリンクとしての働きはできなくなります。
単なる、飲みやすい甘い飲み物になってしまいます。
スポーツドリンクのイメージは、体に良い、弱った体に水分を補給してくれるイメージです。しかし、これは糖分過多な嗜好品です。歯科医院にはスポーツドリンクの習慣的な摂取が、虫歯や歯周病の原因であろうという患者さんが毎日にように訪れます。歯科医師として残念でなりません。