歯科用レントゲン写真(以下、X線)では、目では見えない2次元的な情報を得ることができます。X線の出現により、多くの歯科治療の診断レベルが上がりました。X線が開業歯科医院の臨床に応用されるようになった当時は、歯科医院で撮影して、外注で現像してもらうというスタイルでした。それが現像技術の進歩により、歯科医院で現像できるようになりました。その後、デジタルX線の出現で、被ばく線量が5分の1~10分の1くらいなり、診断スピードも格段に早くなりました。そして、最近は歯科用CT(以下、CT)の出現により、歯科の診断に画期的な革命が起こっています。CTは医科用CTと比べ、X線照射量は8分の1~50分の1と大幅に軽減できます。

CTの出現により、

・X線では見えなかった部位が容易に確認できるようになりました。顎の内部構造もリアルに見えるようになりました。

・顎や歯だけでなく、上顎洞(鼻の奥)の形態や粘膜の状態、病巣などを立体画像で確認できるようになりました。

・インプラント治療だけでなく、矯正や根管治療、親不らずなど、幅広く歯科治療に応用することができ、正確な審査・診断により治療の安全性が高まりました。

【インプラント治療】

インプラント手術をするところの骨の幅、神経や上顎洞との距離が正確に測定できるようになり、今までインプラント治療が無理であると診断されていた方でも治療が可能になるケースが増えました。また手術の安全性も飛躍的に高まりました。

【矯正治療】

術前の顎の状態、歯の位置が3次元的にわかるので、歯の移動の限界が予測でき、また軟組織の状態もわかるので、治療計画が立てやすくなりました。

【歯周病治療】

歯周病は、細菌感染による骨の破壊が起きる病気であるため、骨の破壊の程度などをリアルにみて診断することができます。したがって、非常に予知性の高い治療ができるようになりました。

【親知らずの抜歯】

CTを親知らずの抜歯に利用することで、立体的に把握することができます。これにより神経を引っ掛けてしまう可能性や、周囲の炎症の程度、病巣の有無や大きさ、位置なども判断・考慮して、治療を行うことができます。また、埋伏歯などの位置なども精密に判断できるので、余分な切開や骨の切削などを避けることができます。

【根管治療】

歯根の先端の病巣発見や、治療後の治癒の状態などがわかるようになったことにより、診断レベルが上がりました。