歯科医院にも『味がおかしい』と訴えて来院される方がいらっしゃいます。

【歯科医院で診ること】

  • 舌やお口の中の乾燥状態

『味がおかしい』と訴えられる患者さんの多くにお口の中が乾燥されている方がいらっしゃいます。お口の乾燥を併発する全身疾患には、糖尿病や腎臓疾患、シェーグレン症候群などがあります。また、副作用として乾燥を併発する薬を飲まれている場合があります。抗精神病薬をはじめ、胃腸薬・降圧剤・抗アレルギー薬などさまざまな薬が、副作用として乾燥を生じます。その場合、担当医師と連絡をとり、薬の変更をお願いしたり、保湿用のジェルを使用していただくことで改善することがあります。

  • 舌に傷がある場合。

原因となっている入れ歯、かぶせ、歯のとがった部分などの調整を行います。舌に炎症がある場合は、悪性貧血、鉄欠乏性貧血、胃腸障害がないかを確認し、専門医と連携をとります。さたに、高齢者では強い痛み止めなどの薬の副作用で口内炎を生じることがあり、この場合も医科と連携をとります。

  • 舌や口腔に白い変化がある場合

舌やほっぺたに、ガーゼで拭ってもとれない白い苔のようなものがついている場合、口腔カンジダ症が疑われます。抗真菌薬による口腔カンジダ症の治療は、味覚の改善に効果がある場合があります。

 

【歯科でできないこと】

味覚障害と同時に『食べ物のニオイがしない』といった症状がある場合、耳鼻科関連の疾患が原因で、味覚障害が発生している可能性があります。また味覚障害に加えて、手足のしびれ、頭痛や発音、構音障害などがある場合は、『脳疾患』である可能性があります。

 

【舌苔の清掃】

舌苔が口臭や味覚障害の原因になっている場合があります。ご家庭での歯磨きのときに、舌苔もいっしょに清掃することを意識しましょう。しかしながら、舌は軟らかくデリケートな組織です。硬い組織である歯の清掃用の歯ブラシで、同じように磨くと簡単に傷つきます。(100gfという弱い力で3回こするだけで舌に微細な傷がつくといわれています)。強すぎる力での舌の清掃は、舌を傷つけ、さらに味覚障害を生じてしまいます。専用の舌ブラシで清掃するようにしましょう。舌苔は高齢になるほどつきやすく、毎日の体調によっても変化します。舌を観察する習慣をつけ、舌苔があまりついていない時は、舌の清掃はしないほうがよく、またすべてを取り除く必要もありません。弱い力で拭えるくらいの舌苔を取り除くことを習慣としてください。