歯を支える骨が溶けてしまい歯がグラグラしたり出血したりするお口の中の病気は以前は歯槽膿漏と言われていましたが、最近は歯の周りの病気ということで歯周病で統一されています。

 

最近、この歯周病と全身疾患、全身状態と深くかかってきているということがわかってきました。歯・口は消化器官の一部として身体全体とつながっているため、口腔に発症した病気が全身に、また全身の状態が歯・歯周組織に影響するなど、歯周病と全身疾患とは双方向に関連し、影響する可能性があります。

 

  • 歯周病のリスクファクター

「歯周病が全身疾患を引き起こす要因になっている」場合と、「全身疾患に罹患することで歯周病を悪化させる」という二つの方向性があることが、多くの研究であきらかになりつつあります。

例えば、全身疾患を改善することが、歯周病の改善につながる例としては「糖尿病の治療」や「禁煙」が挙げられます。歯周病に罹患することが全身の健康状態に影響するとされているのは、糖尿病、心血管系疾患、呼吸器疾患や早産・低体重児出産などが挙げられています。

 

  • 全身疾患、全身状態から歯周病への影響

歯周病は細菌である感染症であると同時に、生活習慣病です。

  • 喫煙

生体は体内に侵入した病原菌に対して免疫反応で防御します。歯周病は病原菌に対して、生体が守ろうとする反応の結果、歯肉の腫れや出血となって現れます。しかし、喫煙により歯肉が低酸素状態であったり、免疫力が低下している場合は、腫れや出血が少なく、症状を自覚できないまま歯周病が進行してしまいます。つまり、歯周病に罹っているにも関わらず、歯肉が腫れたり、出血したりといった自覚症状がでるのが遅れます。その結果、自覚症状が出たときには歯周病が相当進行している場合も珍しくありません。

喫煙者への歯周治療は、ある程度の改善は見られるもの、非喫煙者に比べて改善度や予後が悪いとされています。

  • 糖尿病

糖尿病と歯周病のかかわりについては、糖尿病患者の感染しやすい体質のために歯周病疾患者が増加することが古くから指摘されていました。肥満を伴う糖尿病患者は非肥満の患者に比べ、歯周病の進行が早まることがわかってきました。

 

次号では、歯周病から全身疾患、全身状態への影響をお伝えします。