自律神経は意思とは無関係に内臓や血管の働きを支配しています。自律神経には交感神経と副交感神経があり、ヤジロベエのように微妙なバランスを取り合って働いています。交感神経は、主に昼間などの活動時や、緊張、興奮している時に働く神経です。交感神経が優位になると、アドレナリンという神経伝達物質が分泌され、これが血管を収縮して血圧を押し上げ、消化管の働きを抑制することで、体は活動的になります。反対に副交感神経は、主に夜間などの休息時や、リラックスしている時に働く神経です。副交感神経が優位になると。アセチルコリンという神経伝達物質を分泌して、心臓の拍動をゆるやかにし、血管を拡張させて血液を促し、消化・排便を促進します。

これは人間の体を守るためにできあがった機能です。例えば、道でバッタリ熊に会ったとします。そうすると、交感神経が優位になり、血圧が上がります。手や足に汗がにじみ出し、攻撃するときや走って逃げる時滑らないようにしてくれます。また、血管が収縮するために、けがをしても出血量が少なくてすみます。口の中では、唾液の分泌量が減り、歯を食いしばって戦いやすい状態を作ります。緊張したらお口の中が乾く経験は誰にでもあるでしょう。昼間はそうやって、敵に会ったり、獲物を捕まえるために都合の良いように交感神経が優位になります。夜は疲れた体をリラックスさせ、回復させるために副交感神経が優位になるというのが、人間の体の自然な働きです。自律神経のバランスが交感神経・副交感神経どちらに傾いても体の不調につながります。

現代では、めったに道で熊に遭遇することはありませんが、熊に会った時と同じ体の状態が体の中で起きています。それが口呼吸です。緊張すると口が渇きます。逆に口が渇けば体は緊張しているのと同じ状態になります。本来なら副交感神経が優位になる休むべき時間にも熊に出会った状態とおなじ体の反応である交感神経優位の状態が続いてしまいます。交感神経が優位な状態で引き起こされる病気としては、高血圧、糖尿病、胃潰瘍、腎臓病、狭心症、脳出血、高脂血症などです。口の中では歯周病や口臭の原因となります。

なぜ、口呼吸になるかですけれども、口の周りの筋肉が緩んでしまっていることが大きな原因の一つです。昔と比べて、固いものも噛まなくなった。大声を出してコミュニケーションをとらなくなった。大声を出して笑わなくなった。などがあります。また、もう一つの大きな原因は舌の位置が下に降りてしまったということです。過度のストレスがあると、どうしてもため息が出てしまいます。ため息をつこうとすると、自ずと舌の位置が下がるため、口が自然と開いた状態になります。歯周病が安定していたのに、また悪くなった患者さんのお話しを聞くと、引っ越ししたり、職場環境が変わったり、家族が病気になったりとか過度のストレスがかかっている場合が多いです。またこれから夏休みになり、お盆明けごろになると歯ぐきが腫れる人が急増します、これは子守り、孫守りによる疲れによるストレスで口呼吸になる方が多いからです。口呼吸を予防するには、カラオケで大きな声で歌う。固いものを良く噛んで食べる。過度のストレスに注意する。ストレスがあってもため息をつかないように意識することが大切です。