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【最近増えている働く女性の悩みとは?】

「院長お話しがあります」
女性スタッフが私の部屋をノックして入ってくる。

以前ならこういうケースは『結婚の報告』『懐妊の報告』がほとんどでした。
しかし、ここ数年増えてきたのは、祖父母や親の介護による勤務時間の相談です。

いわゆる入院の3か月ルールというものができ、
基本的に3か月以上の入院者は退院を勧められる。

中には24時間たんの吸引が必要な要介護者も家に戻され、
そのお世話をするのが家族の仕事となる。

例えば、
脳卒中などで親が突然倒れた場合、3か月で良くなるか、
もしくは亡くなるかしないかぎり、その負担は家族を直撃する。

厚生労働省の資料によると、
男性の健康寿命は70.42歳。女性は73.62歳である。
その後男性は9.13年、女性は12.68年、介護もしくは寝たきりとなる。

例えば、
45歳の時70歳の親が倒れれば、介護するものはその後
約10年は満足に仕事もできないどころか、プライベートの充実とは程遠い生活をしいられる。
現在そのしわ寄せは主に働く女性にきている。
45歳の女性というと、子供の教育にものすごくお金のかかる世代でもある。
結婚して、子供が出来、ローンを組んで家を建て、そのローンの返済
そして子供教育費のためにがむしゃらに働く。

そういう時に、介護のために働くことが制限される。
命より大切なものがあるはずもなく、やむなく子供の教育費が圧迫される。

子供が希望しても進学させてやることもできず、日々の介護生活に追われる。
これは遠い将来の話ではなく、今現在起こっていることなのです。
そして、この先恐ろしいほど加速して大きくなっていく社会問題でもあります。
2025年に800万人といわれている団塊の世代が後期高齢者となり
高齢者の人口比率は約30%になります。現在の延長線上で行けば、
子供の教育費どころじゃない家庭が激増することになる。
これは決して大げさな脅しではなく現実の問題なのです。

【問題を助長する医療制度の課題とは?】

私は、医療従事者という立場、そして主に女性を雇用している事業主という立場、
そして臨床歯科医師という立場からこの介護の問題に大きな関心を持っています。

医療従事者という立場で、現状を考えますと、
あきらかに今の医療制度はおかしいと言わざるを得ません。

町のお医者さんに患者はあふれています。
しかし、患者が多いから医療費の単価(医療保険の点数)が下げられ続けています。
医療はどんどん薄利多売でないと経営が成り立たなくなっているのです。

医療というものは本来、患者の生活に寄り添い、行動変容を起こすようなプロとしてのアドバイスや
相談を行い、患者を健常者へといざなうことが仕事のはずです。

しかしながら、
薄利多売をしいられる現在の医療制度は、検査と薬を出すことが医院経営の柱にならざるを得ないということになってしまっています。

その結果、ものすごい数量の薬を服用する高齢者が少なくありません。
真面目な人ほど医師が言われた通り薬を飲むのです。
私は医療人として薬自体を否定するつもりは毛頭ありませんが、
薬を飲む続けることは次の病気を誘発しているという事実もお伝えしなければなりません。

そのような渦を巻きながら病気の人が増え続けて、その結果医療費が莫大になって、
歳入のほとんどが医療費であるという異常事態が続いています。
そして、それに対して医学部の定員を増やしてこの病気が多い状態を脱しようというのが国の方針のようですが、このまま医師の数が増える、検査の精度が上がるとなると益々、病気の高齢者が増えていってしまいます。
熱帯で発生した小さな台風が周りのエネルギーを吸収しながら超大型台風になるがごとく要介護の高齢者を増産するということになります。

【これから私たちがすべきこととは?】

女性を雇用する事業主という立場から申しますと、
介護事情でキャリアを断念せざるを得ない状況というのは、事業所にとっても大打撃です。
求人難倒産なんて話も聞くようになりました。男性も同等に協力して介護をしたらいいじゃないかという意見もあって当然だと思います。
でも、介護というきめ細やかな配慮や優しさが求められる現場では女性の方に適正があると感じるのも事実です。なんといっても女性が持っている共感力というものすごい力が男性よりも優れているのも介護に向いている理由です。

このままいくと、おそらく働きざかりの女性の多くの労働力が自宅介護に持っていかれることは明白でしょう。

そして、臨床歯科医師という立場から感じていることは、
この介護地獄から脱出できる方法を私を含め多くの歯科医師は知っています。
それは口腔ケアです。ただ現状で口腔ケアが大切だとわかりながら、
先述のような理由でプロとして口腔ケアを担う歯科衛生士の就業状態が非常に悪く、
全国民が歯科医院での口腔ケアを受けようと思っても、
とてもじゃないけどそのキャパシティーがないという問題もあります。
なかなかこの負のスパイラルを改善する方法が見つかりません。

でもです。

歯医者は口の健康が全身に直結することを
スポーツトレーナーは運動することが健康維持に直結することを
整体院は体のバランスが免疫力に直結することを
動物病院は動物を愛する気持ちが心の安らぎそして全身の健康につながることを
飲食店は食の安全が全身の健康に関係することを
清掃業者は清潔な空間が精神も健康も健やかにすることを
服飾関係者はきれいな洋服は抗鬱剤を飲むより有効なことを
理美容院は髪型で気持ちよく健康になれることを
感動を提供する人は感動が健康に影響することを
笑顔関係の仕事の人は、笑顔がものすごく免疫力を上げることを

それぞれがそれぞれの立場で本気で健康寿命を延ばすことを考え
力を合わせることができれば、きっと幸せな超高齢化社会になると思うし、
この素晴らしい国民性ならできると思う今日この頃です。